血管攣縮(れんしゅく)を予防するEPAのはたらきとは

血管が突然けいれんを起こし異常に収縮する現象である「血管攣縮(けっかんれんしゅく)」。2003年にそのメカニズムが解明されたと発表されてから、血管攣縮を抑制する方法について研究が進みました。血管の異常収縮が抑制されれば、狭心症やくも膜下出血後の予後を悪化させずにすみ、突然死の予防につながる可能性が示唆されたからです。

血管の異常収縮を予防する方法のひとつとして、その可能性に注目が集まっているのはみなさんご存知の「EPA」。でも、サプリに配合されている通常のEPAでは効果がないといわれています。それはいったい、どうしてなのでしょう。

心筋梗塞の予防や狭心症などの再発を気にかけているかたにはぜひ、知っていただきたい情報です。

血管と血液の健康に貢献するオメガ3脂肪酸

みなさんもきっと「オメガ3脂肪酸」という言葉はどこかで聞いたことがあるはずです。このオメガ3脂肪酸の代表格はEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)で、細胞膜や生理活性物質の元となることがわかっています。

ちなみに生理活性物質とは、ほんの少しの量で人間の生理に作用してカラダの働きを調整する物質のこと。ビタミン、ミネラル、ホルモン、酵素、神経伝達物質、核酸、サイトカインなどが生理活性物質です。これらの生理活性物質なくして、人間が生きていくことはできません。

ここでスポットをあてるオメガ3脂肪酸のなかでも、EPAは脂質異常症(高脂血症)の治療薬として使用されている成分で、アメリカ心臓協会(AHA)やアメリカ心臓学会(ACC)ではオメガ3脂肪酸(n-3系不飽和脂肪酸)に富む食品を摂るように勧告まで出しています。以下にEPAのエビデンスとして認められているものを挙げておきましょう。

  • 血栓ができるのを防ぐ
  • 動脈硬化を予防する
  • 中性脂肪を減らす
  • 善玉コレステロールを増やす
  • 血圧降下作用がある

このほかにも、喘息、アルツハイマー、リウマチなどさまざまな疾病への作用機序について取りざたされていますが、現時点で科学的根拠があるものは、血液の質を改善して血管の老化を防ぐ役割を果たす、という点。生活習慣病のリスクが高まる中年以降の人には、このオメガ3脂肪酸は予防のためにも生活の質を改善するためにも、意識的に摂取すべき成分であることは間違いありません。

オメガ3脂肪酸は体内で合成できない必須脂肪酸

ここで少し脂肪酸について説明しておきたいと思います。脂肪酸とは脂肪を構成する物質のことで、その分子構造により大きく飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の3つに分類されています。厚労省の食事摂取基準によれば、この3種類の脂肪酸を「3:4:3」というバランスで摂取することを推奨しています。

まず飽和脂肪酸は肉などの動物性脂肪や乳製品、ココナッツ油などに含まれる脂肪酸で、過剰摂取は動脈硬化の原因になるとされています。ただし体内でコレステロールを生成するためには必要な脂肪酸です。

一価不飽和脂肪酸はオレイン酸に代表され、オリーブ油やナッツ類、アボカドなどに含まれます。カラダのさびともいわれる過酸化脂質を体内で作りにくくして、腸内環境を整える役割を持っています。飽和脂肪酸と一価脂肪酸(n-9系)は体内で合成して作ることができる脂肪酸です。

そしていっぽう、多価不飽和脂肪酸にはn-3系とn-6系という2つのグループがあります。まずn-3系、別名オメガ3脂肪酸。EPA、DHA、α-リノレン酸などがこのグループです。EPAやDHAはぶり、さば、ハマチなどの青魚に多く含まれます。またn-6系はリノール酸が代表格で紅花油やごま油に含まれています。

この多価不飽和脂肪酸のグループだけは体内で合成することができないため、食事から摂取しないと不足してしまいます。ですからアメリカの心臓学会などが不足しがちなオメガ3脂肪酸の摂取を促しているほど。ところがこのオメガ3脂肪酸のEPAやDHAはすぐに酸化してしまったり、加熱によって構造が変化してしまったりするという欠点があるのです。

同じ不飽和脂肪酸でも「シス型」は善、
「トランス型」は悪!

さらにもっと話は難しくなります、でもとても重要なポイントなのでもう少しお付き合いください。

動物や魚に含まれる天然の不飽和脂肪酸はすべてシス(cis)型といって、立体的な分子構造を持っています。よじれて重なり合っているため、分子同士が離れ離れになりやすく、融点も低めです。エネルギー状態が強く流動性があるのが特徴で、血管病の予防や抑制効果が高いのは、シス体のEPAであることがわかっています。

ところがこのシス体は非常に不安定な分子構造をしており、加熱や酸化によりトランス型脂肪酸へと変換されてしまいます。このトランス型脂肪酸というキーワード、どこかで聞いたことがありませんか?

マーガリンやショートニング、サラダ油などに水素を意図的に添加して安定させたこのトランス型脂肪酸は、別名「食べるプラスチック」などともいわれ、発ガン性や動脈硬化、心疾患、アトピー性皮膚炎、アレルギーなどあらゆる疾病の原因物質とされる危険な物質。

トランス型脂肪酸天国でもあったアメリカでは、2018年以降トランス型脂肪酸含有の油脂を食品に使用することを原則禁止する、とFDA(食品医薬品局)が発表したことで大きな話題となりました。このトランス型脂肪酸は悪玉コレステロールといわれるLDLコレステロールを過酸化させ、動脈硬化を誘因する最大の原因物質として糾弾されたのです。

安価で日持ちすることからさまざまな食品に使われているトランス型脂肪酸ですが、もともとは善玉脂肪酸であるはずのEPAもその抽出法によっては「トランス型脂肪酸に変性したEPA」となってしまいます。実際、そのようなEPA・DHAサプリメントが多く存在しているのは事実で、オメガ3脂肪酸のサプリメントが原因で動脈硬化になってしまう・・・などというような冗談にもならないような事態となっているのだそうです。

血管病の抑制効果は生魚などから得られるシス型のEPAには強力に確認できるものの、加熱や酸化でトランス型脂肪酸に変性したEPAにはほんの少ししかその効果がないことがわかってきました。動脈硬化を防ぎ心疾患の予防につながるEPAを摂取するためには、シス型のEPAを選ばなければならないというわけです。

「シス型EPA」をそのまま摂れる食品を
山口大学医学部小林教授が開発

ここでシス型のEPAの研究成果について触れておきたいと思います。血管攣縮の研究に携わってきた山口大学医学部の小林誠教授と医学部の学生で構成されたチームは、このシス体EPAを活用した食品の開発に長い年月を費やしたのだそうです。

血管攣縮のメカニズムを解明し、血管の異常収縮を誘引する酵素を活性化するSPC(スフィンゴシルホスホリルコリン)を特定した小林教授の専門は分子細胞生理学。小林教授の研究チームはSPCとRhoキナーゼなどの酵素が結びつくことがなくなれば、血管攣縮という突然死の要因を阻止できるのではないかと考えました。この研究の経緯については前のページでくわしく説明しましたね?

その研究の過程で発見されたのが、先ほどから説明してきたEPAだったわけですが、通常の抽出方法では加熱してEPAを抽出するしかなかったため、低温のままEPAを抽出しシス型を維持する方法はないか、産学共同で開発が進められました。そしてついに製薬会社がシス体EPAの立体構造を壊さずに抽出精製する方法を発明、小林教授のチームはこのシス体EPAをそのまま摂取できるような食品の開発に着手しました。

長年しく錯誤を繰り返し、EPAの分子構造を崩さずに体内への吸収を高める成分を配合するなどして、ついに製品化に成功。以下のようにその独自性が認められ、特許なども取得されています。現在では一般的な製法によるふつうのEPAと差別化するため、「小林式EPA」と呼ばれています。小林式EPAが配合されたサプリメントには以下のような特許があり、血管病予防に役立つ食品として各方面から注目されました。

  • 特許を2つ取得している
  • 「血管病予防に効果を有する食品組成物」として特許を取得
  • 特許庁のHPに、エパゴールドは血管病を予防する旨の記載あり
  • 2006年 国立大学法人山口大学大学院医学系研究科の小林誠教授との血管病予防食品共同研究事業が、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成金交付対象事業に採択される。健康食品の研究が採択されるのは非常にまれである
  • 2008年 中小企業庁より産学官連携事業における成功事例として表彰
  • 2013年 公益社団法人発明協会 発明協会会長奨励賞を受賞

血管病の予防や抑制効果が高いのは「シス体のEPAである」であることがわかっているため、その立体構造を維持したまま摂取できる食品を開発した小林教授。こうして産学協同開発の成果が身を結んで商品化されたことにより、心筋梗塞や狭心症などによる突然死や再発予防に役立つ可能性が出てきたのです。

小林式EPAについて調べてみる>>

「血管病による突然死をなくしたいという情熱と同じ志をもった教室メンバー全員の血のにじむような努力の積み重ねの結果です。病気になった“後”でないと服用できない医薬品と異なり、食品であれば病気になる“前”から摂取できます。血管異常収縮の特効薬成分を含む食品により、血管病の真の予防が可能となることをきたいしています」

とのちに『山大病院だより』(山口大学医学部付属病院発行)に小林教授はコメントを寄せていらっしゃいます。このようにシス体の構造を維持したままのEPAを、サプリメントとして摂取したあとの吸収率を上げるための研究も進められました。

より吸収率を向上させるための研究でさらなる特許も取得

どんなにカラダにいい成分でも、体内にしっかり吸収されなければ意味がありません。人体に入った栄養素は、まず肝臓に運ばれます。肝臓で栄養素の代謝(合成や分解といったエネルギー変換)が行なわれたあと、腸へ流れて、栄養素は体内に吸収されていきます。そのため、肝機能が低下していると、そもそものエネルギー変換がうまくいっていないため、腸での吸収率も悪くなってしまうのです。肝臓は年齢、そしてアルコールの過剰摂取、添加物が多く含まれた食品(市販の弁当やパン、インスタント食品など)を摂り続けることで負担が増え、機能が低下していきます。

そこでEPAの消化吸収を高めるために肝臓から排出される胆汁酸の分泌を促進させるといわれる成分を配合したほか、さらに血管攣縮を抑制できる成分について研究を進め、2012年に「血管病予防に効果を有する食品組成物」の特許も取得しています。これらの開発成果を元に、マリアアザミエキス末や西洋タンポポエキス末、カキ肉エキス末より血管病予防や抑制につながる製品を販売しているのだそうです。

酸化していないEPAを摂取する

血管の老化を抑制し、突然死を予防するために認知度の高いEPA・DHAサプリメントに、こんなカラクリがあるとは驚きでした。EPAであればどれでもよい、ということではなかったのです。動脈硬化を予防するサプリで動脈硬化になる可能性があるなどと、思いつきもしませんでした。

血管の異常収縮(血管攣縮)を予防するため、また心筋梗塞や狭心症の予防のためにも毎日の摂取を習慣化したいEPAですが、酸化が進んでしまったサプリでは、その効果を実感することができない可能性があることがわかりました。

サプリだけを摂ればすべての心疾患を予防できるというわけではありませんが、循環器系の疾病に不安を抱く多くの人がこの小林式EPAを摂取しているそうですから、一度試してみるのもいいかもしれません。

日本人のほうが欧米人より血管攣縮のリスクが高い!?>>