日本人は欧米人の3倍も血管の異常収縮を起こしやすいってホント?

毎日のようにハンバーガーやステーキなど脂質の多い食事を摂り、心臓や血管の健康とはかけ離れているような印象が強い米国人ですが、ある指標で比較すると、米国より日本人のほうが危険な状態であるというデータがあります。

それはいったいどのようなことなのでしょうか。

世界的に見て心筋梗塞や狭心症の死亡率は低い

「心筋梗塞二次予防に関するガイドライン」(2011年改訂版)によれば、米国人と比較すると日本人の冠動脈疾患死亡率は3分の1から5分の1と非常に低く、世界的に見ても日本人の虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症)による死亡率はとても低いことがわかっています。

WHO(世界保健機関)による調査(2012年)を見ると、調査対象の172カ国中、虚血性心疾患の死亡率が高い国の上位は以下のとおり【人口10万人あたりの虚血性心疾患による死亡数(年齢調整値)より】。

  • 1位 トルクメニスタン 479,080人
  • 2位 カザフスタン   383,865人
  • 3位 ウクライナ    378,352人
  • 4位 ウズベキスタン  369,437人
  • 5位 キルギス     359,839人

いっぽう、低い国のなかでも日本は最低レベルと並ぶほど低くなっています。

  • 168位 オランダ    30,656人
  • 169位 ルクセンブルク 30,523人
  • 170位 日本      26,405人
  • 171位 韓国      26,319人
  • 172位 フランス    23,804人

こうして世界のランキングを見ると、日本人の心筋梗塞などによる突然死のリスクは低いことがわかります。ただし、死亡率だけを見て安心してはいられない事情もあるのです。

心疾患の要因となるリスクは欧米も日本も同じであり、脂質異常症、高血圧、糖尿病、肥満、喫煙、運動、飲酒などが危険因子ですが、日本人の主食であるごはんや刺身などで魚をよく食べることなど、食習慣が心筋梗塞や狭心症による死亡率を下げている要因であるといわれています。ただし現代ではこうした日本人らしい食生活を送っていない人が多くなっています。

実際、日本人の死因第2位の心疾患と脳血管疾患を合計すれば第1位のがんに迫る人数になるのですから、血管の健康維持がいかに重要かということを理解しなければなりません。

そしてさらに、日本人のほうが欧米人より血管がけいれんするように異常に収縮する「血管攣縮(けっかんれんしゅく)」という症状が出やすいということがわかっているのです。

日本人は血管の異常収縮が欧米の約3倍

 海外の人々が注目する魚を中心とした日本の食生活は崩れ、若い人は特に肉類に偏った食生活になっています。またファストフードやスイーツなどによるトランス型脂肪酸の摂取も問題視されています。さらに日本は世界一の高齢化社会で、平成27年の内閣府発表によれば、総人口に占める65歳以上の人口割合(高齢化率)はなんと26.7%にもなります。3.7人にひとりが65歳以上ということを考えれば、加齢とともに進行する動脈硬化などの血管病にかかる人が増えていく可能性が高いといわれています。

さらにこのサイトで注目している血管攣縮(冠動脈攣縮)に関するデータとして気になるのが、「日本人は血管攣縮が欧米の3倍近く多い」という事実。血管攣縮の原因の究明や予防法はまだ解明途上でわからない部分も多いようですが、β遮断薬という交感神経(緊張を高める神経)の働きを抑える薬剤を投与することにより、冠動脈攣縮の発症が多くなるというレポートがあるとのこと。したがって冠攣縮性狭心症にはこのβ遮断薬の投与は禁忌とされています。

 日本人になぜ血管攣縮が多いのかその根本的な理由はわかっていないものの、米国人との比較において心筋梗塞を起こす患者のうち、高血圧者と喫煙者の割合が特に高い、という特徴があることが指摘されています。血管攣縮を起こしやすいのはこのようなタイプの人。

  • 長年喫煙している
  • 毎晩のようにお酒を飲む
  • 慢性的に寝不足もしくは不眠
  • 仕事が忙しく過労気味
  • ストレスを感じることが多い

血管攣縮は寝ている間や早朝などの安静時に起こりやすく、また発症は男性に多いというデータもあります。身に覚えのあるかたはまず禁煙することから始めるしかありません。喫煙者は血管の異常収縮による狭心症や心室細動などの不整脈のリスク、心筋梗塞になる可能性が高まります。喫煙者と非喫煙者の心筋梗塞にかかる危険度は3.6倍にもなることがわかっていますから、予防のためにとるべき行動は禁煙しかないでしょう。

血管の異常収縮を抑制する方法を見る>>

日本人の塩分摂取量と高血圧の関係

狭心症や心筋梗塞が高血圧と密接な関係にあることはこれまでにも説明してきましたが、厚労省の調査では高血圧と診断される日本人はなんと4,000万人以上! 計算上は日本人の3人に1人は高血圧、60代以上になると2人に1人は高血圧ということになります。

 高血圧は万病の元のようにいわれますが、じつは高血圧の90%以上は原因が特定できないのだそうです。ただ高血圧になる要因については遺伝的なものと加齢による血管の老化以外は、塩分の取りすぎやストレス、運動不足、肥満など生活習慣に紐付けられるものが多いことがわかっています。

高血圧と聞くとよく「塩分をひかえるように」指導されますが、実際塩分摂取量と血圧は相関関係にあり、塩分量が少なくなれば血圧も下がります。余分な塩分を体外に排出する腎臓に負担がかかることで血圧が上がることもわかっているため、生活習慣病の患者は1日の塩分摂取量として5~6gを目安にするよう指導されますが、成人男性の1日の塩分摂取量の平均は11gと約2倍。

日本人は欧米と比較して塩分を取りすぎているとされていますが、体重あたりの食塩摂取量で比較すると欧米人の塩分摂取量は日本人の2分の1程度しか摂取していないことになるのだそうです。これはちょっと意外に思えるかもしれませんね。

 食塩と高血圧の関係については、国立循環器病研究センターが運営しているWEBサイト、循環器病情報サービス「食塩と高血圧と循環器病」にくわしく載っているので、ぜひそちらでチェックしてみてください。

「死の四重奏」が招く突然死

 みなさんは「死の四重奏」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは動脈硬化をすすめてしまう脂質異常、高血圧、耐糖能異常、肥満といった生活習慣病の要因となる4つの症状について付けられた名称です。近年ではこの4つに喫煙もしくは睡眠時無呼吸症候群を加え「死の五重奏」などともいわれるようになりました。

医学の進歩で急性心筋梗塞などの心不全が原因で死亡する人の数は年々減少傾向にありますが、高血圧に由来する心不全と腎障害は増加傾向にあるといいます。若年層でも狭心症やくも膜下出血などで突然死することがありますが、肉の摂取量が増えて魚の摂取量が年々減少していることと無関係ではありません。魚に含まれるEPAの摂取量減少と虚血性心疾患や脳梗塞などの血管病患者の増加は無関係ではない、という調査データもあるそうです。

死の四重奏、死の五重奏といったおそろしいサイレントキラー軍団の餌食にならないためには、生活習慣を見直すほかに方法はありません。「そんなことは言われなくてもわかるけど、いまの生活パターンは変えられないし変える気もない」という捨て台詞が聞こえてきそうですが、危険を承知でリスクとなる行為を続けていれば、心筋梗塞や不整脈、狭心症にある日突然見舞われてしまう可能性が高まります。

最大の一次予防は食事を含む生活習慣の見直しであり、再発(二次)予防は投薬治療の継続と、やはり生活習慣を正していくしか方法はないのです。