妊娠中の心疾患について

妊娠中の女性にとって重要な心疾患のリスクや、症状について解説しています。

心疾患リスクと妊娠の関連性とは

妊娠中の心疾患が、母体や胎児に重篤な危険性を及ぼすというデータが発表されました。
医療技術が進歩すると共に、生まれつきの心臓病(先天性心疾患)を抱えている女性であっても、問題なく生活し、また妊娠して子供を出産できる可能性は劇的に向上しています。しかし、一部の「高リスク疾患」を持っている女性については、母体や胎児への危険性を考慮して、医師から妊娠を諦めるように推奨される場合も少なくありません。
そして、妊娠断念を勧められる条件には、以下のような疾患が挙げられます。

  • 肺高血圧症
  • アイゼンメンジャー症候群
  • 大動脈縮窄症
  • マルファン症候群
  • 症候性大動脈弁狭窄症
  • 心臓の単心室及び収縮機能不全
  • 周産期心筋症の既往歴……etc

これらの中でも、条件によっては医師の管理下で妊娠可能な場合や、あるいは他の症状でも特に危険性が認められる時には妊娠が難しいこともあります。その為、心疾患のリスクを抱えている女性は、まず専門医へ相談することが大切です。

妊娠中の心臓にかかるストレスとは?

妊娠中、心臓に影響するストレスには、様々なものが挙げられます。

  • 血液中で酸素を運ぶ為のヘモグロビンの減少
  • 血液の増加
  • 心臓が1度の拍動で送り出す血流の増加
  • 心拍数の増加……etc

妊娠中は、母体の心臓だけで母子の生命を守ります。つまり、妊娠中の心臓は、そもそも健康的な女性であっても、普段より余計に働かなければならないのです。
ましてや、胎児の成長と共に心臓への負荷も上昇し、妊娠30週前後や分娩時に至っては、その危険性は極めて高くなってしまいます。その上、子供を無事に出産してからも、およそ数週間は安心できないことも忘れてはいけません。

妊娠中の心不全の症状や兆候とは!?

心疾患を抱えていても妊娠を望む女性や、また自身に心疾患リスクがあると知らずに妊娠してしまう女性も少なくないでしょう。 妊娠中の心疾患の症状や兆候を知っておくことは、リスク管理として非常に大切です。

  • 息切れ、呼吸困難
  • 脈拍の異常
  • 心臓より低い部分が腫れたり膨張したりする
  • 首筋の血管(静脈)が膨らむ
  • 収縮期雑音
  • レントゲン検査で発見される軽度の心臓肥大……etc

以上のような症状は、正常な妊娠中でもしばしば起こり、実際、足のむくみや息切れなどは、多くの妊婦にとって共通の悩みだとも言われています。その為、これらの症状が現れたからといって、必ずしも強い恐怖を感じるべきではありません。むしろ、いたずらに不安を抱くことで、精神的なストレスが状況を悪化させる危険もあります。
しかし、妊娠中の心不全は切迫早産や不整脈の起因にもなり、妊婦や胎児の死亡リスクを上昇させることも事実です。特に、症状が重い人の場合は、速やかに産婦人科医や心臓専門医へ相談することが大切です。

妊娠中の心不全に対する治療法は?

心不全リスクの高い妊婦では、通常より綿密な妊婦検診の他にも、しっかりとした休息、過度の食べ過ぎ(必要以上の体重増加)や精神的ストレスの解消、貧血症状の改善などが必要です。
その上で、以下のような条件を守った治療が行われます。

  • ワルファリン、ACE阻害薬、アルドステロン拮抗薬、サイアザイド系利尿薬、その他特定の不整脈治療薬などの使用禁止
  • 軽作業や安静時にも心不全症状が現れる患者では、妊娠20週以降の運動制限や、ベッド上での安静……etc

特に軽作業で発作が起こる患者においては、妊娠前から専門的な投薬治療や、可能であれば手術などによる外科的治療が望まれます。ただし、軽作業さえしていない状態でも発作が起きてしまう患者では、残念ながら早期の治療的流産が勧められてしまう可能性も否定できません。

また、心房細動などを併発している女性の場合、心臓の安定に投薬治療や電気治療が行われますが、加えて「血栓」の予防治療が行われます。しかし、ワルファリンなどの抗凝固薬の使用が不可能な為、ヘパリンや低分子ヘパリンを用いた治療が必要です。尚、細菌の感染による心内膜炎の予防などに関しては、基本的に妊娠していない時と同様の治療が行われます。

どれだけ医療技術が進歩しても、妊娠は女性にしかできない生命現象の根源であり、周囲の人々や医師らには、妊婦をサポートすることしかできません。 だからこそ、女性自身がしっかりと自分の体や状態について考えることこそが、大切な自分の命や赤ちゃんの命を守る上で、絶対的に大切なことと言えるでしょう。