心筋梗塞の再発リスクが高い人とは

心筋梗塞の再発リスクや再発率、再発予防の基礎知識についてまとめました。いったん狭心症や急性心筋梗塞を起こしてしまった人は、薬物療法・カテーテル治療・手術治療(冠動脈バイパス手術)といった治療を受けているはずですが、治療法によって再発率は異なるものなのでしょうか?

心筋梗塞治療後の再発リスクはどれくらいある?

まず急性心筋梗塞の場合は、狭くなったり塞がったりしている冠動脈を広げて再び血液が流れるように、カテーテルという細い管を入れて血管を広げ血流を回復させる治療をします。この「カテーテル治療」にもいくつか種類があるのですが、種類によって再発率が異なることが知られています。

バルーンカテーテル/再発率 30~40%

狭くなった冠動脈に風船(バルーン)がいついた細いカテーテルを入れ、このバルーンをふくらませて狭くなった血管を広げます。血管拡張後このバルーンカテーテルは抜き取ります。

血管内に異物が残らないという長所がありますが、治療後3ヵ月以内に再狭窄(心筋梗塞の再発)が起こりやすいというリスクがあります。3ヵ月以内に再狭窄が生じなければ、再発の恐れはかなり低くなるといえるでしょう。

ステントカテーテル/再発率 20%前後

ステンレスなどの金属製で網目状になったカテーテルを入れ、風船を使ってステントをふくらませる方法。風船は抜き取った後元に戻ってしまうことが多いのですが、ステントは血管を支えるフレームのような役割をしてくれるため、再狭窄率(再発率)は20%前後まで下がります。

薬剤溶出型ステント/再発率 3~7%

ステントに免疫抑制剤がコーティングされたもので、ゆっくりと薬剤が溶け出し再狭窄のリスクを軽減する治療法とされています。現在はこの薬剤溶出型ステントが主流となっています。

バイパス手術/再発率 3%以下

さらに、もうひとつの治療法である冠動脈バイパス術はもっとも生存率が高く再発率は低い外科手術です。ただ、血管が狭くなっている場所が冠動脈のどこにあるか、何箇所にあるかなどの状況によってバイパス手術が可能かどうかが決まります。バイパス手術では自分の血管を冠動脈に吻合(ふんごう)して血流量を確保します。

バイパス手術後の心筋梗塞再発率は、術後5年で3%以下ともいわれていますが、手術した箇所とは別の冠動脈に狭窄や閉塞が起こるケースもあります。患者の年齢によっても判断が異なります。確率はあくまでも確率ですので、再発のリスクがゼロになるということはありません。

バイパスとして利用した血管(グラフト)がつまって閉塞を起こす確率は、術後10年間で20%前後といわれています。

定期検診で兆候を見逃さない

主治医から心臓超音波検査やCT検査、心電図などによる検診を年に1回は受けるように指示されるはずですので、検査で狭心症や心筋梗塞の兆候が出ていないか定期的にウォッチしていく必要があります。

特に就寝中の心臓発作や不整脈などはいつ起こるかわかりません。起きている時間であれば家族に気付いてもらえますが、寝ている間に発作が起きてしまうと対処が遅れて突然死につながりやすくなります。この心臓発作の原因でもある血管のけいれん、異常収縮については下記ページで詳しく解説しています。

【特集】就寝中に起こる血管の異常収縮が心筋梗塞再発のリスクを上げる!?>>

また再発の不安や動悸、息切れ、息苦しさなどの不安がぬぐえない、いつまた心臓発作を起こすかわからないといった人が再発予防のためにどのような対策をしているか、下記サイトでも紹介されています。

動悸や片頭痛、めまいなどの不安を解消した人の声をコチラでチェック>>

どうすれば心筋梗塞や狭心症の再発率は下がるのか

軽い狭心症などと診断されると、まず医師から食習慣の見直し、軽度の運動など生活習慣を大幅に見直すように指示が出ると思います。投薬による治療を続けながら、再発のリスクを遠ざけるためには、生活習慣病の予防につながる対策を講じる必要があるからです。危険因子を取り除かなければ、再発リスクを下げることはできません。

高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、過度な飲酒、すべての生活習慣病の原因でもあるバランスを欠いた食生活。そしてもっとも危険な因子である喫煙。これらはすべて、狭心症や心筋梗塞の原因であり、再発の危険因子。特にたばこを吸う人は吸わない人の2~3倍、発症率も死亡率も高いとされています。2年間禁煙するだけでも心筋梗塞の発症リスクが下がるそうですから、禁煙外来に通ってでもたばこは止めるべきでしょう。

心臓に大量の血液を送り込むパイプである冠動脈の壁がプラークの破碇などでなくなってしまう閉塞。冠動脈が閉塞したことにより、心筋が壊死してしまう梗塞。血管が一時的に異常に収縮する攣縮(れんしゅく)性の狭心症などで閉塞が起こっても、回復する見込みは十分にあります。ただ、梗塞を起こしてしまったらもとに戻すことはできませんので、一次予防(狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患にかからないようにする)および二次予防(再発させないようにする)をしっかり実践していくしかないのです。

生活習慣との合併症によるリスクについて、「心筋梗塞二次予防に関するガイドライン」(2011年改訂版/日本循環器学会、日本冠疾患学会など12学会合同研究班)にいくつか明記されていたのでここでご紹介しておきます。生活習慣病が疑われると以下のように心筋梗塞のリスクが高まります。

  • 血圧が135/85以上のグループ 男性:2.1~2.3倍 女性:1.3~2.8倍 発症率が高まる
  • 糖尿病患者は、非糖尿病患者と比較すると、2.6倍発症率が高まる
  • 総コレステロール値が260mg/dl以上のグループ 男性:3.8倍 女性:3.3倍 冠動脈疾患での死亡率が高まる
  • 日本人の冠動脈疾患死亡率は米国人の1/3~1/5と低いが、喫煙および高血圧の寄与が大きい
  • 冠動脈疾患の発症・死亡の45%が喫煙、34%が高血圧、5%が糖尿病、5%が脂質異常症。女性の場合はそれぞれ18%、17%、9%、8%と推定
  • 1日1箱以上の喫煙者の冠動脈疾患死亡リスクは、非喫煙者と比較して男性が2~4倍、女性は7倍もリスクが高まる

生活習慣病はすべての疾病に影響を及ぼすものですから、心筋梗塞の前にまず生活習慣病にならないようにすべきであることがわかると思います。

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心筋梗塞を再発させないためにできること

心臓リハビリテーションに取り組む

血管の老化である動脈硬化がどの程度進んでいるのか、これまでの生活習慣やライフスタイル、年齢などによって個人差はありますが、血管がいま以上に老化しないように「心臓リハビリテーション」に取り組む必要があります。

心臓リハビリテーションとは、循環器系の疾患をもつ患者を対象にした、食事療法や運動療法のこと。食事療法と運動療法を適切に実施すれば、心筋梗塞の再発による死亡はもちろんのこと、すべての疾患による死亡率も有意に下がることがわかっています。

「人は血管から老いていく」の言葉どおり、血管の老化を未然に防ぐことと老化が進まないようにすること、これが最大にして唯一の予防策といえるでしょう。動脈硬化性の病気には脳梗塞などもありますが、危険因子の数が多ければ高リスク、少なければ低リスク、中間は中リスクと3分割してコレステロール値(脂質)や摂取エネルギー量の管理目標値を設定するなどして、リスクマネジメントを継続していく。そして再発予防のためには適切な薬物療法を継続することも重要なポイントです。

運動療法のポイント

運動療法の場合も個人差はありますが、1回最低30分、週3~4回(毎日できればベスト)、歩いたり軽いジョギングしたり自転車をこぐなどの有酸素運動をすることが推奨されています。週に1~2時間程度しか有酸素運動をしない人と5時間以上する人を比較すると、死亡リスクが50%低いというデータもあるそうです。

心筋梗塞の再発リスクを下げる食事療法のポイント

食事で特に着目すべきは、魚の摂取量による発症リスクの違い。1日20g程度しか魚を摂らない人と1日180gくらい摂る人を比較すると、180g摂っている人のほうが発症リスクが40%も低いという事実です。

アメリカの心臓協会や心臓学会などでも、n-3系不飽和脂肪酸(オメガ3脂肪酸)の摂取が血管の老化を抑制するというエビデンスが認められているため、心筋梗塞や狭心症などの血管病予防に、オメガ3脂肪酸を多く含む食品を積極的に摂取するよう勧告を出しているほど。

オメガ3脂肪酸のうち、栄養として摂取しなければならない必須脂肪酸には次のようなものがあります。

  • EPA(エイコサペンタエン酸)
  • DHA(ドコサヘキサエン酸)
  • α-リノレン酸(体内でEPAやDHAに変換される)

α-リノレン酸はえごまやくるみ、しそ、亜麻仁油、なたね油などに多く含まれ、EPAとDHAはいわしやぶりなどの青魚や活動量の多いまぐろなどに多く含まれます。

厚労省が発表している日本人の食事摂取基準(2015年版)によると、n-3系脂肪酸(EPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸)は1日に2g程度摂取することが望ましいと、これまでの推奨量である1gから2倍に引き上げられました。オメガ3脂肪酸については男女ともに50~69歳の目標摂取量がいちばん多く設定されているという特徴があります。

これは血管の老化と無関係ではなく、EPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸が中高年に必要不可欠な栄養素であることの証でもあります。肉食が多く心筋梗塞による死亡率が高いアメリカなどでは、1日に3g以上の摂取が推奨されています。心疾患は再発するリスクを伴うため、再発を予防するために食習慣などの見直しは必須です。

心筋梗塞の再発リスクを下げる食事について詳しく見る>>

EPAが心筋梗塞や狭心症再発のリスクを下げる可能性あり

心臓の病気といえば、欧米など肉食中心の国の発症率が圧倒的に高いのですが、じつは狭心症や心筋梗塞、またくも膜下出血の原因ともなる「血管攣縮(けっかんれんしゅく)」(血管がけいれんするように異常収縮を起こす症状)に関しては、日本人のほうが欧米人の約3倍も発症率が高いことがわかっています。

この血管攣縮のメカニズムについては循環器系の専門家たちにより研究が進められてきましたが、なかなか原因の特定には至りませんでした。ところがあるとき日本の医学博士がその原因物質を突き止め、ついにそのメカニズムを解明。

血管攣縮を引き起こす酵素を活性化する物質を特定できたことで研究は一気に進み、血管攣縮をEPAが抑制する可能性を示唆した研究報告が発表されました。

当時は全国紙などで大々的に取り上げられ、「魚油(EPA)が血管の異常収縮を抑制する」という画期的な発見により突然死を防ぐことにつながると、大きな話題を呼びました。この血管の異常収縮、すなわち血管攣縮を安静時(就寝時など)に発症してしまうと、かなり危険な状態になることが多いことがわかっています。

この安静時に起こる攣縮のことを「冠攣縮性狭心症」といいますが、この就寝時や安静時の血管攣縮は男性に起こりやすく、日本人は欧米人の3倍も多いといわれる症状。その危険な症状をEPAが抑制してくれる仕組みについては下記ページでくわしく説明しています。

なぜEPAが血管攣縮や再発リスクを下げるのか、くわしく見る>>

血管攣縮を抑制するEPAについてGoogleで調べる>>