油断禁物!心筋梗塞の後遺症や合併症をチェック

このページでは、心筋梗塞を起こしたあとに発症する可能性がある、後遺症や合併症について説明していきます。いったん心筋梗塞を起こしたら後遺症からは逃れられないものなのでしょうか?

心筋梗塞で壊死した心臓は元には戻らない

心筋梗塞で命を落とす確率は約30%といわれています。

数字の上では、70%の人は敏速な対応と治療によって回復していることになりますが、実は一度壊死してしまった心筋は再生しないということはあまり知られていません。

私たちの体を構成する細胞や組織は、新陳代謝を繰り返したり、怪我などで負った損傷を修復したりしながら健康を維持しています。しかしながら、心筋細胞や脳・脊髄にある神経細胞は、一度損傷すると再生できない細胞なのです。

ヒトを含む哺乳類は、新生児期であれば心筋の再生能力があるようですが、大人になってからは再生することができないということは、これまでの医学の通説でした。

 

ほ乳類の心筋が再生能力を有するのは新生児期の限られた期間だけである. そのため,成体期に心筋梗塞などで損傷を受けた場合,心筋細胞はそれを修復するために十分な自己複製を行えず,心筋の機能低下や心不全が誘導される.

出典:(PDF)日本内科学会雑誌「12.虚血心筋保護と心筋再生療法」105,2016 [PDF]

しかしながら、最近の研究では、心筋の修復に必要な因子や、どんな仕組みで修復がされるのか、という点に関する研究が進んでいます。全貌が解明されたわけではありませんが、臓器の大きさを制御するHippo経路と呼ばれる機序がどうやら心筋再生に深い関わりを持っていることがわかってきています。

 

また、心筋梗塞後の心筋を再生する際にはMuse細胞と呼ばれる細胞に注目した心筋再生療法が脚光を浴びています。

心筋梗塞発症後は,細胞治療による梗塞心筋組織の再生療法が期待される.最近発見されたmultilineagedifferentiating stress enduring(Muse)細胞はsingle cellから3胚葉に分化できるが,癌化しない性質がある.〜中略〜Muse細胞は急性心筋梗塞発症後の新しい治療法として有望である

出典:(PDF)ファルマシア「Pitx2は抗酸化応答の活性化によって傷害後の心臓修復を促進する」53(1),2017 [PDF]

とはいえ、心筋梗塞で一度損傷した心筋を再生させる治療法はまだまだ開発・研究段階です。少なくとも現時点の医療では、一度壊死した心筋は再生できません。だからこそ、心筋梗塞の予防がとても大切となるのです。

出典: 「再生医療-心血管病の新しい治療」国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス

つまり一度心筋梗塞、すなわち「心臓の一部が壊死した状態」になった心臓は、元の正常な心臓に戻ることはない、ということです。もちろん生きている心筋が壊死した部分をカバーして血液を全身に送り出しますが、完治した状態ではないことを認識する必要があります。

壊死した範囲が狭い時は、まだ十分にその働きを補うことができますが、壊死してしまった範囲が多い場合は、血液を送り出すポンプの力が弱くなってしまうため、心不全不整脈狭心症など今後の生活に影響を与える後遺症や合併症が出る可能性を十分に視野に入れて予後を悪化させないようにしなければなりません。

胸の痛みや息苦しさ、心臓になんらかの不安を感じた時点で早期にその異常に気づき、治療や手術を行なえば壊死する範囲は狭まります。治療が早ければ早いほど、後遺症や合併症はは出にくいといわれていますので、心筋梗塞や狭心症の前兆を見逃さずにすぐに循環器系のクリニックで検査をすることが重要です。

心筋梗塞の後遺症・合併症とはどのようなもの?

心筋が部分的に壊死してしまうと血液を全身に送り出すポンプの働きが弱くなるため、全身に血液を十分に送り出せなくなります。そのため、身体機能が低下してさまざまなリスクに対する抵抗力が落ち、息切れしやすくなったり、疲れやすくなったりします。

血液によって運ばれるべき酸素が十分に行き渡らないため、疲労の回復力も落ちます。見た目でわかる症状としては、足を中心とした下半身がむくむ場合があるようです。このほかにも以下のような症状が出る可能性があります。

【不整脈】

症状としては急な動悸や息切れ、めまい、脈拍が飛ぶ、といった症状。一度心筋梗塞を起こした人はご自分の心臓の機能に不安を抱えていますから、たとえそれが軽度の運動による息切れであっても、「また心臓に異常が出たか?」という不安が常につきまといます。

心筋梗塞を起こした後、投薬治療などを継続しますが、人によっては薬を飲んでいても脈の乱れや動悸の不安で、日常生活にも支障をきたすケースがあります。特に高齢者の場合、こうした不安は精神衛生上もよくありません。

このサイトでも何度か紹介しているように、血管の健康維持と血流の健全化に貢献するEPAやDHAを積極的に摂取するなど、生活習慣の中に心臓をケアする行動をプラスしていくべきでしょう。

EPAやDHAは、n-3系多価不飽和脂肪酸(必須脂肪酸)と呼ばれるものです。日本内科学会では、心筋梗塞の二次予防として、多価不飽和脂肪酸の中でもn-3系多価不飽和脂肪酸の摂取を増やすことを食事からできる二次予防の方法として推奨しています。

n-3 系多価不飽和脂肪酸は心筋梗塞の予防効果があり,これを多く含む食品(魚介類)の摂取が勧められる.

出典:(PDF)「心筋梗塞二次予防に関するガイドライン」日本内科学会雑誌,106(3),2017 [PDF]

中でもほぼ100%純品のEPAは、高脂血症や閉鎖性動脈硬化症の治療薬として薬理が認められ、実際に治療の現場でも使われており、その原理も最近の研究により明らかになってきています。

ω-3 脂肪酸は、ω-3 位に炭素-炭素二重結合を持つ不飽和脂肪酸の総称であり、このうち α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA,イコサペント酸)およびドコサヘキサエン酸(DHA)が栄養学的に必須である。EPA は血小板凝集抑制作用 1)を有し、血液中の中性脂肪を減らすはたらきのほか、血液中の総コレステロールを抑制するとともに、HDL 等の高比重リポタンパクを増加させ動脈硬化を防ぐ作用も有することから、医薬品やサプリメントの成分として市販されている。

出典:(PDF)「エイコサペンタエン酸エチル(EPA-E)の生体内動態保」脂質栄養学,24(1),2015 [PDF]

EPAを摂ることで、中性脂肪値やコレステロール値が下がって血液もサラサラになり、動脈硬化の予防も期待できる、という仕組みです。

たとえば当サイトでも特集でご紹介している山口大学医学部の小林教授の研究によれば、狭心症などの虚血性心疾患を抱え硝酸薬やカルシウム拮抗薬、β遮断薬などの投薬治療を継続している患者の中には、薬を飲んでも動悸や息切れなどの症状が一向に改善されないケースもあるそうです。

このような後遺症に悩む方が小林式EPAを摂取したことで、動悸や息切れ、さらには片頭痛などの不安から解放されたという事例もあるとのこと。実感するかしないかは個人差がありますが、後遺症の改善や合併症を予防するためのひとつの選択肢であるということは言えると思います。

小林式EPAについてよりくわしく知りたい、体験談などを読んでみたいというかたは、Googleで「小林式EPA」を検索して調べてみるとよいでしょう。

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【除脈】

これも不整脈のひとつなのですが、除脈といって脈が遅くなる後遺症もあります。気が遠くなるような感じや息切れなど、脈が非常に速くなる頻脈の場合は動悸、めまい、息苦しさ、最悪の場合は失神するなどの症状が出ます。このような状態が頻繁に、そして心臓の違和感が30分など長く続く場合は、すぐに診察を受けて適切な治療を受けてください。

【心不全】

心臓が正常機能を失い血流が滞った結果生じるさまざまな身体の不具合の総称が「心不全」です。大きく分けて心臓の機能が急減に低下するものを急性心不全、徐々に機能低下が現れる場合を慢性心不全といいますが、心不全のタイプによって治療法も異なります。

心不全の原因には心臓弁膜症や高血圧などが挙げられますが、約50%は心筋梗塞や狭心症が原因だといわれています。心臓の機能が低下して最終的に行き着くところはこの心不全。心拍出量が減ると動悸、疲れやすい、だるいなどの症状がでますし、血流が滞るとむくみや腹部の鈍痛、肺に酸素が十分に供給されないことによる息苦しさなども感じるようになります。

心臓の機能低下は、壊死してしまった心筋の範囲によって決まり、大きさに比例して後遺症も大きくなります。心不全が悪化すると、食事をするだけでも疲れてしまい、食欲不振になったり、就寝時に突然、呼吸困難に陥ったり…ということにもなりかねません。

【心筋梗塞後症候群】

別名ドレスラー症候群とも呼ばれていますが、急性心筋梗塞後の2~4%の患者に発症する可能性があります。心筋梗塞発症後2~10週の間で認められることが多く、肩の痛みや激しい凝り、腕を動かしたときの痛みや体位を変えたときに激しい痛みを感じることから「肩・腕・手症候群」という呼び方もあるそうです。

治療法としては鎮痛薬や湿布療法、温熱療法などにより改善されるため、心筋梗塞の再発や心臓疾患が重篤化しているということではないようです。ただしなるべく早くかかりつけ医に相談し、適切な治療を受けることが大切です。

突然死のリスクが高い致死性不整脈

突然死のリスクがいちばん高いのが、致死性不整脈といわれる「心室細動による心停止」。心室細動は、心停止に至ってしまう重大な症状です。

後遺症として不整脈が出た場合、不整脈の原因を取りのぞく「カテーテルアブレーション」で治療することが多いのですが、特に心室細動を起こしやすいと判断された患者の場合、体内に埋め込むタイプの「植え込み型除細動器」というペースメーカーを心臓に植え込む方法をとります。心室細動を起こさないようにしないと、いつ心臓発作を起こすかわからないからです。

例えば、AEDを設置した事業者で、どの程度AEDを使った心肺蘇生訓練が行われているのかを調べた研究では、アンケートに回答したAED設置事業所のうち、心肺蘇生訓練を全く行っていないという事業所がなんと全体の13.5%にも上りました。これは10事業所中1事業所以上に相当します。

また、訓練をしていたという事業所でも、その半数が実際に訓練を受けた人数は年間3人以下であると回答しています。

2014年1月時点で、一般社団法人日本救急医療財団にAED設置者として登録をされている事業者から、心停止発生場所の施設種別を考慮して無作為に抽出した1,000事業所について、AEDの設置台数、および心肺蘇生訓練の実施状況を郵送による無記名のアンケート調査を行った。 〜中略〜心肺蘇生訓練のAED1台あたりの人数は、9.3人/年であった。心肺蘇生訓練を全く行っていない事業所は64事業所(13.5%)で、訓練人数がAED1台あたり3人/年で会ったのは221事業所(46.6%)であった。〜中略〜本アンケート結果は、AEDを設置した事業所の心肺蘇生訓練が十分に実施されていないことを示唆すると考えられた。

出典:(PDF)「AED 設置事業所における心肺蘇生訓練の実施状況について」蘇生,35(3),2016 [PDF]

AED適正配置のためのガイドラインには、心肺蘇生訓練を定期的に行うことが推奨されているものの、こうした研究からもわかる通り、まだまだ実際に使えるまでの教育・啓蒙環境は整っていないというのが現状と言えます。

最近は、心室細動を正常に戻すAED(自動体外式除細動器)という医療機器が、公共施設や学校などさまざまな場所に設置されるようになってきました。ただし、いざというときにそれを利用して人の命が救えるか、というとまだまだ啓蒙が不足しているところはあります。また公共の場だけでなく、一般の会社でも常備していく必要があると思います。

中高年だけでなく10代の若者が致死性不整脈で命を落とすこともありますので、学校教育を含めもっと広くAEDの使いかたの講習をするなどして、突然死を未然に防げるようにしていかなければなりません。

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「心筋梗塞」による突然死は、決して他人事ではない

このように、心筋梗塞は一度起こしてしまうと、元の健康な心臓に戻ることのない恐ろしい病気です。心筋梗塞や狭心症を発症して初めて、「人間は心臓が正常機能しないと生きてはいけない」ことに気付くのです。

心臓の健康は血管の健康なくしては維持できません。24時間・365日、一秒たりとも休むことなく全身に血液を循環させるためには、まず心筋のはたらきを阻害するようなリスクを排除することと、血液が滞りなく送り届けられるような血管を維持しなければならないのです。

生活習慣病による死の四重奏、もしくは喫煙習慣や睡眠時無呼吸症候群などのリスクを加えた死の五重奏といった状態になってからでは遅いことを知り、できるだけ心臓や血管に負荷をかけない生活を心がける。そのうえで、心疾患の予防に努めることが重要になってきます。

加齢とともにさまざまな機能は衰えていくことはわかっているのに、日々の忙しさにまかせてその事実についつい目を背けてしまうもの。自分にはひとつとして心臓病のリスクはない、と言い切れる人は少ないと思います。

脳梗塞やくも膜下出血などと比較すれば、心筋梗塞や狭心症は素早い処置と治療で後遺症もなく復帰できる可能性が高い病気です。この機会に、自分がどの程度心疾患のリスクを持っているか、チェックしてみてはいかがでしょう。突然倒れて後遺症に悩む前に、まず自らを知ることから始めましょう。

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