心筋梗塞の治療法にはどのようなものがある?

心筋梗塞や致死性の不整脈などの心臓発作を起こしたときは、一刻も早い救急搬送と速やかな治療が生死を分けます。ここでは救急の対処法や治療法についてまとめました。

心筋梗塞の治療法 外科手術と薬物療法

軽度の心筋梗塞では、1週間から10日程度入院することになります。

その際は、血流の改善や血圧降下のための治療が行われ、安静にすることが重要です。

心筋梗塞の治療法には、薬物治療カテーテル治療冠動脈バイパス手術の3つがあります。これらの治療法について、詳しく見ていきましょう。

薬物治療

薬物治療とは、主に細くなった冠動脈の血流をよくするために行います。血液をサラサラにする「抗血小板薬」もその1つです。他にも、冠動脈を拡張する、血圧を下げるといった薬物療法があります。

薬物治療で使われる薬は、主に以下の3種類です。

硝酸薬 血管拡張薬の一種で、冠状動脈を拡張させ心筋への血液の流れをよくする効果があります。
全身の静脈を拡張し、心臓へ返ってくる血液の量を減少させることで、心臓への負担を少なくします。同時に全身の動脈も拡張させ、血圧を下げる効果もあります。硝酸薬の働きにより、発作の原因となる心筋の酸素不足の解消が望めるのです。
硝酸薬には、ニトログリセリン錠ニトロペン錠ニトロール錠などがあります。
β遮断薬 交感神経の興奮を抑え、心拍数を抑える働きがあります。心臓の仕事量を抑えることで、発作予防の効果が見込めます。
しかし、β遮断薬には気管を狭くする作用があるため、喘息を悪化させることがあります。気管支喘息の人は使えませんので、ご注意を。
カルシウム拮抗薬 硝酸薬、β遮断薬が使用できない、また使用しても効果が見られない人に適用されます。そのため、代替手段として処方されることがほとんどです。

カテーテル治療

カテーテルと呼ばれる細い管を冠動脈まで入れ、塞がってしまった血管や、狭くなった血管を広げて血流を回復させる治療法です。

外科手術ではあるものの、心臓自体を切ったりするわけではないので、患者の負担が軽く、短時間で治療が終了するという利点があります。虚血性心疾患に対する代表的な治療法といえるでしょう。

冠動脈バイパス手術

外科手術には、冠動脈バイパス手術というものもあります。これは、塞がってしまった冠動脈はそのままに、別の側副路をつくることで心筋への血流を確保するもの。

カテーテルでは治療できない場合や、何度も再発する場合はバイパス手術が必要です。一度の手術で血行の完全回復が見込めますが、心臓血管外科による開胸手術のため、体への負担が大きいというリスクがあります。

ハイブリッド治療

最新の治療法として注目されているのが、ハイブリッド治療です。心疾患は高血圧や動脈硬化による大動脈瘤などの合併症が多く、同時に複数の治療が必要となるケースがよくあります。このような場合、通常の治療法では手術を2回に分けることで入院期間も長引いてしまい、患者の負担も大きくなってしまいます。

なるべく短い期間で治療を終えて退院してもらうために冠動脈系疾患とそのほかの疾患を同時に手術できるように、ハイブリット手術室を設けている総合病院などもあります。心血管治療チームを結成、執刀医同士が協力し合うかたちで患者の体力や重症度に応じた治療を行ないます。高齢者や腎疾患などリスクの高い患者にもハイブリット治療は有効であるとされています。

ただしハイブリット治療だけでなく、すべての治療法については医師から家族へのインフォームドコンセントが重要。医師によっては説明が不十分ということもあり得ます。心臓発作などで一刻を争う手術の場合はともかくとして、それ以外の場合は手術を受ける本人も家族も、手術によるリスクや治療方法による違いなどについて調べてみると思います。もし疑問や不安を感じるのであれば、手術前に担当医に質問してみるとよいでしょう。

心筋梗塞の緊急対処法とは

心臓発作を起こした場合は、痛みの強さや自覚症状にかかわらず、速やかに救急車を呼ぶことが最善策です。できるだけ落ち着いて、現在地や倒れた人の症状を伝える必要があります。

119番のスタッフが電話で処置を指示する場合もあるので、それに従ってください。心臓が停止して脳へ血液が行かなくなると、10秒で意識がなくなり、痙攣を起こします。さらにそれが1分以上続くと、脳に障害が残る可能性が高まり、3分以上では脳が深刻なダメージを受けると言われています。

緊急時に素人が落ち着いて対処するのは容易ではありませんが、救急車が到着するまでの間に、人工呼吸や心臓マッサージなどの心肺蘇生法をできるように、普段から知識を身につけておきたいものです。

119番に電話をかけるときは急病であることや怪我の有無、病人がいる住所(できれば目印になる建物などがあるとよい)、病人の年齢や性別、家族の場合は高血圧や糖尿病など、本人の既往症や服薬の有無などを正確に伝えます。

緊急時の心筋梗塞の対処法とはまた最近は「AED(自動体外式除細動器)」を置いている施設も増えているので、AEDの使い方についてもWEBなどで見ておきましょう。特にご家族が狭心症や心筋梗塞を発症したことがある場合は、ネットで使い方などを調べておくと安心です。ただAEDのキットには使用方法が書いてありますので、指示にしたがって使えば知識がなくても大丈夫。

心筋梗塞による突然死でいちばん多いのは、心筋梗塞の発作が心室細動という危険な不整脈を引き起こし、心停止にいたるパターンです。このような場合は一刻も早く救命措置をとらないと手遅れになってしまいます。救急車を呼んだあと衣服をゆるめ、楽な姿勢をとらせましょう。嘔吐を伴う場合は、と社物がのどを塞がないように気をつけて、気道を確保します。

国立循環器病研究センターの循環器病情報サービスのWEBサイト循環器病情報サービス内に「心筋梗塞が起こったら」と「心臓発作からあなたの大切な人を救うために」というページがあり、AEDの使用法や人工呼吸のやりかた、胸骨圧迫の心臓マッサージのしかたなども載っています。心室細動を起こすと1分経過するごとに約10%も生存率が下がるということなので、一度じっくり読んでおくようにしましょう。

ペースメーカー治療

心臓の鼓動は、心臓の筋肉に心臓の中にある神経が電気信号を送って起こります。心臓の神経には洞結節という太い場所があり、ここから電気信号を放出します。しかし、洞結節の信号が弱すぎたり、神経が切れたり壊死すると心臓の動きが悪くなり、心筋梗塞を起こします。

これを改善するために役立つのがペースメーカーです。弱った神経の代わりに電流を出して心臓の鼓動を促します。500円玉3枚分くらいの重さの機械で、リードという長い管が伸びています。

ペースメーカー本体は胸やお腹に埋め込み、リードを心臓に通して洞結節の電気信号の代わりに微弱な電流を流します。

ペースメーカーは心臓の電流を受け取り、それに応じて最適な強さの電流を流します。

ペースメーカー手術・埋め込み方法

ペースメーカーは手のひらサイズの小さな機械です。これを体内に埋め込んでリードを心臓に通します。埋め込みの方法は大きく分けて2種類あります。胸部埋め込みと腹部埋め込みです。

「胸部埋め込み」

鎖骨の下あたりにペースメーカー本体を埋め込み、リードを静脈の中に通して心臓に入れます。手術は1~2時間、局所麻酔で行う簡単な手術です。胸を1か所4~6cm切り開き行います。手術後の回復は早く、手術した当日から立ち上がることができ、入院日数も短めです。

大人は基本的に胸部埋め込み手術を行います。

「腹部埋め込み」

腹部にペースメーカーを埋め込み、心臓の外側に直接リードを取り付けます。開腹手術のため大規模な手術になり、全身麻酔を使います。患者の負担が高く、入院日数も胸部埋め込みより長くなります。

成長期の子供や静脈にリードが通せない大人は胸部埋め込み手術を行います。

埋め込み後の日常生活は?

ほぼ問題なく日常生活を送れます。定期健診さえ受ければ、ほとんど不自由なく日常生活を送れます。

しかし、強い電磁波を発する機械に近寄るとペースメーカーが誤作動を起こすおそれがあります。電波に関わる仕事や溶接業の方は仕事に支障が出るかもしれません。
近づいてはいけないと言われる機械は

  • アーク式溶接機、誘導型溶鉱炉
  • 高出力の電波塔
  • レーダー基地
  • 高出力トランシーバー
  • 全自動マージャン卓
  • 低周波・高周波・電気治療器
  • 電気自動車の急速充電器(普通充電器は密着しなければ問題ないという見解です)

などがあります。仕事や趣味、住居に関わる場合は主治医とよく相談しましょう。

ペースメーカーの技術向上で、携帯電話や家電、テレビゲームでは誤作動を起こさなくなりました。電磁波が多いIH調理器でも、埋め込み箇所を近づけなければ問題ないとされています。

胸部埋め込み手術の場合は、1~2か月間は埋め込んだ側の腕を高く上げないほうがよいでしょう。傷が開くおそれがあります。腕に強い負荷がかかるスポーツ(鉄棒、重量挙げなど)はできません。

埋め込み手術痕の定期健診

ペースメーカーは、正しく作動しなければ命に関わります。そのため、定期点検が欠かせません。おおよそ3~6か月に一度、定期健診を受ける必要があります。

ペースメーカー外来で電気信号を確認する装置(プログラマー)を通し、ペースメーカーが正しく作動しているか確認します。検査は5~10分ほどで終わり、身体への負担も少な目です。正しく電気信号に反応するか確認するため、少し動悸が強くなることがあります。

定期点検でペースメーカーの寿命も確認できます。寿命が近づいたらペースメーカー本体を交換しないといけません。

ペースメーカーの入れ替え時期は?

個人差がありますが、ペースメーカー本体の寿命はおおよそ4~8年です。寿命が来ても突然止まりませんが、早めに交換手術をする必要があります。

ペースメーカー交換は本体だけでリードはそのまま使います。そのため、交換手術は埋め込み手術よりも簡単で早く終わります。

【参考】