【Q&A】登山中に心筋梗塞を起こしやすい?

Q.登山中に心筋梗塞を起こしやすいというのは本当ですか?

A.本当です。山岳遭難における三大死因の1つが「心臓突然死」であり、中高年の心臓突然死は、ほぼ全例が心筋梗塞といわれています。「(滑落などによる)外傷」「心臓突然死」「寒冷障害(低体温症と雪崩)」という山岳遭難三大死因のうち、「心臓突然死」は季節や高度にかかわらず、どんな山行でも起きる可能性があり、発症してしまうと救助に時間がかかるため手遅れになるケースが多く、注意が必要とされています。

タレント・イモトアヤコさんのマナスル登頂や、登山家・三浦雄一郎氏のエベレスト登頂に帯同した、日本人初の国際山岳医で医学博士の大城和恵さんによると、登山中の心臓突然死には次のような特徴があるそうです。

山での心臓突然死の特徴

●90~95%が男性
●34歳以上に多い
●規則的な運動をしていない人
●半数が初日に起こっている
●心筋梗塞、狭心症、糖尿病、高血圧症、高コレステロール血症を持っている人に起きやすい

「男性が多い」「中高年が多い」「運動不足」「高血圧や糖尿病を抱えている」などをみると、心筋梗塞のリスクを抱えた人の特徴と重なる部分もちらほら……。しかし、健康な人であっても、山は体に想像以上に大きな負担を与えているのです。

なぜ登山中に心臓突然死が起きるのか

登山を開始すると、交感神経が活発になり体は緊張状態に入ります。急激な運動や、気温・気圧の変化、乾燥など、平地とは違う環境に体がストレスを感じ、血圧が上昇、脈拍が早くなることで、心臓には大きな負荷がかかります。

たとえば、3000m級の高山では、空気中の酸素濃度が薄く肺の中の酸素が海抜0m時の約65%近くまで減ってしまうため、低酸素血症が起こり、肺動脈内の血圧も高くなります。こうした体の変化に対応するため、心臓はいつも以上に活発に働かなければならず、健康な人はもちろん、高血圧、動脈硬化、持病に心臓病のある人は特に、心臓発作のリスクが急激に高まるのです。

登山中は水分不足になりやすいことも、突然死の原因の1つです。脱水症状になると血液がドロドロになって血流が滞り、心筋梗塞や脳梗塞が起こりやすくなります。

日本登山医学会の発表によると、登山初日で登山開始6時間以内に発作などなんらかの症状が現れる人が多いそうです。普段は「心筋梗塞とは無縁だ」と思っていた人でも、山に登ると想像以上の負担が心臓にかかり、重篤な疾病の引き金となるのです。

安全に登山を楽しむためには

登山中の突然死を防ぐためには、一にも二にも「予防」が大切です。安全に登山を楽しむためのポイントについてまとめました。

●自分の体力に合わせてゆっくり登る
●高血圧や狭心症など持病の管理
●水分補給・栄養補給を忘れずに
●十分な睡眠をとりストレスをなくす
●風邪や歯痛など体調の悪いときは登らない

万が一、登山中に発作が起きてしまったら、すぐに救助を要請することが肝心です。山行中の心臓発作は時間との勝負。あればAEDを用意して心臓が止まった場合に備え、意識を失ったらすぐに心臓マッサージを始めることで、死亡や後遺症のリスクを最小限に抑えることができます。

登山は、自分の体力にあわせて適切に行えば、運動療法として動脈硬化の予防にもなります。日ごろから体調や持病の管理をしっかりと行い、万全な体調で登山を楽しみたいですね。

参照:
「心筋梗塞後の登山」(公益財団法人 日本心臓財団)
「高年登山者の傾向と対策」(長野県山岳総合センター長野県山岳遭難防止対策協会)
「登山ブームに突然死のリスク」(NEWSポストセブン)
「登山での心臓突然死 起こす人の特徴と対策」(JRO主催講演会)

「呼吸器Q&A」日本呼吸器学会

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